「いつも、思うんだが…いったいどこにそんなに入るんだい?」
パン、ライス、麺類、ジャンクフードの類、プラスチックの器にはサラダが数種類。
果ては大きな袋に入った数々の果物や甘味がやや雪崩気味にテーブルに乗せられている。
一応栄養のバランスは考えられているようだが量が半端ではないのだ。
これがこの小さな体に収まってしまうのだからグラハムは人体の神秘について悩まずにはいられない。
「…胃」
答えは簡潔。
「それはわかっているよ」
予想通りの返答に苦笑する。
刹那はなんのことかわからないといった顔をして手に持ったハンバーガーにかぶりついた。
グラハムなら10分はかけるだろうそれを、あっというまに平らげてしまう様は清々しくもあるがいささか心配だ。
次へと手を伸ばす刹那を制して飲み物を差し出す。
「そんなに急がなくても食べ物は逃げないさ」
そう言うと、口の端についたケチャップを拭ってやる指から逃げるように刹那はうつむいた。
眉根を寄せてちいさく首を振る。
「逃げない、かもしれない…けど、追い付けない」
独特の思考回路から導き出された刹那の言葉は時に謎かけのように難解だ。
それでもじっと耳を傾けて、次の言葉を待てばこの子はちゃんと答えをくれることをもうグラハムは知っている。
さぁ君は何を考えている?
「追い付けない。」
何に?
「あんたに。」
拗ねたような、バツが悪いような顔をして、それでも目をまっすぐに見るひたむきさで。
告げられた言葉に思わず笑み零れる。
そうか。
そうか、君は。
「それは楽しみで食べ物がのどを通らないな」
それじゃ困る。といって差し出されたパンを見てグラハムは今度こそ笑いが止まらなくなった。
まったく愛おしくて仕方がない!